楽したっていいじゃない

初めて介護現場に足を踏み入れた

頃の私の職場

そこはリハビリ特化型老健

『在宅復帰を目標に』とは建前で

大半の人は在宅困難な長期滞在者

 

そこのデイサービスで働いていて

入所者も食事時にはデイフロアに

降りて来て一緒に食べるシステム

 

デイにも通い、時々ショートステイ

も利用するお婆ちゃんがいた

半身不随で車椅子に乗り、片手で

必死にタイヤを回しているけれど

いつもこちらを見て手招き

車椅子を押して〜と

素直な私はお喋りしながら車椅子を

押すのだけれど···

決まって『本人の為になりません』

と、押すのを止めるよう注意される

 

いつものことなのか、ばつ悪そうに

笑ってやり過ごしていたその人も

一度だけ泣きながらこう言った

 

『私より動ける人が押して

もらえて何で私は駄目なのよ!』

 

あまりに悔しかったのか切々と

今までの恨みつらみを私に

ぶつけてきた

うんうん、そうだね、それは

悔しかったよねと頷きながら

辛く当たっていたスタッフの顔を

見ると皆バツの悪そうな顔

 

リハビリの大切さは理解してる

だけど、若い人と違って年寄りに

過度のリハビリが必要か?

勿論介護をする人にとっては少し

でも身体能力が維持されている方が

楽なのは重々承知

 

そこのスタッフの悪いところは

その人の指摘する通り

『えこひいき』をするところ

 

だから私も、皆が厳しくあたる

人を特に好んでお世話している

『楽したっていいじゃない』

 

そういう性格が災い(?)して

今でもそういう人に目をつけられ

甘えられ忙しい思いをしている

 

だけどいいんだ

『楽したっていいじゃない』

今まで苦労して生きてきて

90も越え、尚辛い思いをする

必要なんてない

 

少しでも楽で、楽しい余生を

 

それが私のモットーだから

 

だから私の余生もそうであれと

願わずにはいられない

そんな都合のいい私