流れに任せる

特養に父が入所して9年が経つ

40代で脳出血となり左半身麻痺と

なったが定年まで勤め上げ、余生は

デイサービスや町内のカラオケなど

余暇を楽しんでいた

 

そんな彼も2回目の脳出血では

出血箇所が悪く、意思疎通が全く

出来なくなり施設入所となった

 

暫くは話せないものの面会など

行くと『よぅ』とばかりに手を

降ったり笑顔を見せてくれて

差し入れのオヤツなど食べながら

暫し母と私とで束の間の団欒を

楽しめていた

 

コロナ禍になり面会制限が続く

 

段々反応が薄くなり、食事摂取量も

減って来た

 

昨日施設から相談があると呼び出し

何となく予想はついた

 

今日久々に見た父

真っ直ぐ座れず姿勢も崩れよだれを

垂らし虚ろな目

 

固形物が喉を通らずミキサー食に

してみたが水分も1日で500ml程度

 

要は『胃瘻』を入れませんか?と

いう打診

以前から、その意思はないと伝え

署名捺印までしていたのに···

 

看護師さんや職員的には

『まだ若い(78)のだから』

このままでいいのか?と

 

正直私は、延命には否定的

仕事柄様々な終末期を経験していて

【もしかしたら】と思い1日でも

長生きして欲しいと願う気持ちは

良くわかるし、それを否定する気は

全くない

 

今の父が1日どう思って過ごして

いるのかはわからないけど

食べる楽しみも、人と話して

笑ったりTVを見たり好きだった

歌を歌ってみたリなど出来ず

ただ生きながらえ、ただ悪戯に

胃瘻や点滴で無理矢理寿命を

延ばされてどう思うかなぁ···

 

『胃瘻は考えていません』

でも···と看護師は粘る

点滴なども特養では出来ないので

それではこのまま?

『自然に任せたいです

ご迷惑おかけしますけど宜しく

お願いします』

途中涙が溢れかかるも母の手前

何とか堪えた

 

ようやく意を汲み取ってくれた

看護師さん

 

ここの施設は『看取り』まで

してくれるというところなので

最終の意思確認だった

 

帰り道『もう2・3年は頑張って

長生きして欲しいもんね』と

笑顔の母

 

うん、でも多分そんなに長くは

ない話しだと思うから覚悟は

しておいたほうがいいよ

 

こんな話をする私は冷たい娘?

 

 

昔、冗談交じりに父が言っていた

 

【縁側でさ、本を読んでるんだよ

でさ、それをパタッと落とすの

『お父さん?』って声かけた時には

もう亡くなってるっていうのが

夢なんだ  

コロッと逝きたいな〜】

あのときは何言ってんの〜って

皆で笑っていたな

 

夢は叶わなかったけど

少しでも早く苦痛がなく

穏やかに逝ってもらいたい

それが冷徹娘の1番の願い

 

先に逝ってる愛犬2匹が、きっと

迎えに来てくれるはず

 

ごめんね、父さん

私はそう願わずにはいられないから

 

安楽に過ごせますように